
地球は46億年前に誕生した。そして生命の起源は38億年前にさかのぼる。「最初の生命はどんな形?」という根本的な質問への答えは難しいが、ここでは小さな細胞膜の袋の中に入っていて、膜の外から栄養を取り入れて自分の形を維持し、自分の複製を作ることができるものとしよう。アメーバのような単細胞生物のイメージである。
原始の地球は栄養が豊富だった。そのころ生命体は何を栄養にしたのだろう。生命体を構成する要素=核酸、たんぱく質、脂質=はいずれも炭素化合物、つまり有機物である。初期の生命体は有機物を取り入れたに違いない。原始の海は有機物に満ちていたのである。生命体は原始の海で増え続けた。増殖を安定的に繰り返すことから、そろそろ「生命体」という物質みたいな呼び名をやめて、ダイナミックな感じの「生物」と呼ぼう。しかし原始の海の有機物には限りがある。数億年にわたって生命体が有機物を取り続ければ、海から有機物がなくなってくるだろう。このままではせっかく生まれた生命は絶滅する。
しかし、ちょっと変わった生物が生まれていた。太陽の光エネルギーを使って、水と二酸化炭素(たまにはそれ以外の物質)を利用して有機物を自分で作る生物である。
地球の生物は救われた!
これこそが光合成を行う緑の植物の祖先なのである。32億年前のことだった。この植物の祖先に近い生物は現在も生き続けている。写真にあるシアノバクテリアである。
生物界は大騒ぎして、といっても何億年もかけてだが、自分だけで生きる独立栄養派と、栄養づくりは植物に任せ、自分は生物本来の目的である自己複製に徹する従属栄養派が生まれてきた。この区別は現在に続く。従属栄養派では動物が代表的だが、菌やカビも含まれる。植物はもちろん独立栄養派である。
無菌土壌の謎は解けてきた。土に含まれる成分を32億年前の地球に近づけると、植物は成長できるが菌や動物(虫)は成長できないはずだ。でも、そんな昔の地球にどうやって近づくのか?
その答えも簡単だった。生物の栄養の視点からは、有機物があるか無いかだけの問題になるからだ。無菌人工土壌には有機物を入れなければよい。これで菌と虫は育たない。
植物の輝かしい履歴=有機物に頼らず成長してきたこと=を思う存分発揮して、野菜も花もこの無菌人工土壌で成長してもらいましょう。
Comments