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執筆者の写真Tsunehisa Araiso

~春の風 東風(こち)吹かば~

更新日:2023年5月13日

こんにちは、ラテラCTOの荒磯です。前回の春の風のブログでギリシャ神話の西風の神ゼフィロスを話題にしましたが、日本での春風は東の風ですね。

東風(こち)と聞けば、私は反射的に菅原道真の歌を思い浮かべます。

東風(こち)吹かば にほひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春を忘るな


大宰府に左遷される道真が、京の私邸の梅に呼び掛けた歌としてあまりにも有名(901年)。現代語にすると、「春風が吹いたら匂いを送ってくれ、梅の花よ。主人がいなくても春を忘れるな」といった感じでしょうか? なお、最後の句「春を忘るな」は初出の拾遺和歌集(1006年ころ編纂)に載っているものですが、その後「春な忘れそ」とする歌集もあり、これも人口に膾炙(かいしゃ)されていてどちらか決めるのは難しいようです。私、個人的には「春な忘れそ」の方が感情がこもっているようで好きですが。そう言えば「おこせ」と「をこせ」の違いも見られます。

東風を「あゆの風」と、大友家持は奈良時代に詠みました。万葉集に載っています。「あゆ」は「あい」、「あえ」とも呼ばれる日本海沿岸に広く吹く幸をもたらす風です。家持は当時、越中守(えっちゅうのかみ=今の知事)として富山県に赴任していました(746-751年)。ここで「あゆの風」を知ったのです。後世、あゆ(あい)の風はもっと北寄りで東の風ではないのでは? といった疑問も出ましたが、北大名誉教授の前野紀一氏は「湾曲した富山湾内の沿岸では、海から吹く風は、少し場所がずれると北風にも東風にもなる。必ずしも家持の考え違いとする必要はないであろう。」と述べておられます。(藤女子大学 QOL研究所紀要:The Bulletin of Studies on QOL and Well-Being,Vol.6,No.1,Mar.2011

東の風を春風とするのは季節の象徴として深い趣があり、私は好きです。でも、春に吹く風の全てが東の風ではないことも事実です。往年のアイドル「キャンディーズ」が歌った「春一番」は南よりの強い風です。気象庁の定義では、風速およそ8メートル以上とか。

何はともあれ札幌に住む私は、東でも南でも何でもよくて雪を溶かしてくれる暖かい風を持ち望んでいます。写真は今朝のイチイと石楠花。




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